筋肉少女帯「おまけのいちにち(闘いの日々)」

アルバム購入して一通り聴いたところで、思ったことをさらっと書こうと思います。きっとまた、聴き続けたりライブで何度か聞くと印象も変わってきたりするのだろうな、と楽しみ。何よりも、新曲を迎えて聴いて、ライブで聴きたい!楽しみ。とワクワクする気持ちが起きるっていうことが嬉しい。それがまだ終わらないということが幸せ。
昔を振り返ると、出会った高校生の頃に迎えたアルバムでワクワクした気持ちが、同じバンドで今も続いてるということがすごい。そういうバンドはまだ他にもいるけど(人間椅子がそうだし)、筋少は一度止まっているから、もう終わりだって絶望的になった。もう出ないんだって思って。その時に思っていたのは、筋少はもっと素晴らしい曲を出せるはずなのに。これで終わってしまうのかと。
そんなに大ヒットしたわけじゃないから、このまま時が経ったらCDも廃盤になって世の中から忘れ去られてしまうんだろうか。と寂しく思っていた。でも全然違ってた。こんなに筋少は多くの人に聴かれていて影響を受けたクリエイターがどんどん世の中に出て行って、筋少好きなことをさらに下の世代が知って聴くようになった。
そして復活して、新曲を出すようになってそれを聴いた時に、一度私が諦めて区切りをつけるのに自分なりに面倒で時間がかかったこと、過去のアルバム再発だけじゃなくて、新曲で新たに進んでいくんだって。それがまた心を揺さぶられて好きになったこと。あの時に思ってたことが終わりじゃなかったんだと思った。
復活してから、新曲が次々に出て、ますますその思いは強く確信的なものになっていった。復活した当初は、そんなに長くは続かないんじゃないか、昔からのファンは歳をとって、新曲なんて興味ないと離れていくんじゃないかって思ったのだけど、新しく入ってくるファンが増えたし、私は好きな気持ちは冷めることはなかった。

どうしてだろう、離れていくファンがもう筋少聞かないっていうと、自分が否定されたみたいに悲しくなってしまう。もう他の人のことは気にしないとは思うけれど。
でも、復活後からの若いファンがとても熱狂してる様子を見ると、昔の自分みたいだと微笑ましくなってとても嬉しい。
そうして去年から1年で、新しいアルバムである。もう、前と違うとか比べるとか、私はそんなことじゃなくて、いつでもそうだった、予想や心配なんて吹っ飛ばされる。
もちろん、出会った若い頃の曲は、その時にしか経験できないもので、思い入れが深いのは、比べるものとかじゃない。じゃあなんだろうっていうと、筋少にだけ関して言えば、きっとこうなんだ。
よく大槻の歌詞が昔と違うから良くないとか言われるけど、そうじゃなくて時が経って多くの経験をしている。世の中は変わっている。普遍性があるところもある。年を重ねてきてる変化が面白くて惹かれるんだ。自分が筋少と同じ時を進んでいるから。惹かれ続けているのは、生き様を表しているから。

発売直後のインタビューで制作時のエピソードなどを知ると、なるほどと思う。昭和40、50年代がテーマという。1980年代風ののきらびやかさがあった前2作から、揺り戻したんだなって。今の流行りの音楽はボカロっぽいボーカル加工したのとか、メタルでもモダンっぽいの(詳しくないけどベビメタとかディルアングレイみたいな)を取り入れる感じもないと思った。
内田さんの曲を前作よりも増やしたのも、雰囲気を前作と変えることだったみたいで、内田さん曲らしい重めのダークな雰囲気が濃くなっている。そうしたかったんだな、アニソン路線だけじゃなくて(笑)懐が深いというか引き出しが多すぎるというか、言葉で上手く言えない。
カバー曲を含めて、アルバム1枚の作品として聴くことを大事にしているのをやめない、そうし続けていることが嬉しい。

01. 大都会のテーマ (TVサイズ)

最初にインスト版を聴いてそのままかと思ったら、コーラスが入っててかっこいい!って思った。昭和生まれだけどこのドラマの時代はまだ知らない。(その後の西武警察か太陽に吠えろを見てた世代だから。)70年代のどろっとした感じ。物語の導入に。

02. レジテロの夢

橘高さんのリフがかっこいい。悪魔っぽい。歌詞も殺伐としたイメージ。世界中で起きているテロ戦争、レジスタンスとどう違うのか、どちらとも言えずわからない、昔も今も起きている。どうしても市街戦でランチャーって出てくると、もう今やってるスプラトゥーンの画面が浮かんでしまうので、きっとずっとこの先もこのイメージが離れないと思う。(笑)ラストでガラッと曲調が変わるのが特撮の曲も思い出した。夢うつつっていう雰囲気を出している。世界観が広い。

03. 混ぜるな危険

勢いに乗って、シングル曲がここに。二人が出会ったことで世界がひっくり返るような恐ろしさ、地獄が天国に変わるような感じ。ライブで初聴きした時に中盤の展開と語りにゾクゾクした。

04. 球体関節人形の夜

野水いおりさんのバージョンを先に聴いた時は、橘高さん曲のX.Y.Z.→Aっぽいのだなって思ってたけど、筋少バージョンだと筋少になって同じ曲でもまた印象が変わってる。激しくかつ切ない少女視点のストーリーは筋少曲の特徴の大きな要素でもある。幻想なのかリアルなのか。違いはどこなのか本当は同じなのか。

05. 枕投げ営業

おいちゃん曲のアルバム初出しは今回この曲だけ。おいちゃん曲だー!って全面に出て走り出すような。キャッチーですぐ口づさみたくなる歌詞と曲。こっちはまたもう一つのオーケン得意の少女視点のストーリー。曲のイメージも80年代のアイドル、女子も男子も3人組で踊るやつ(笑)それでアイドル運動会でプールサイドで歌うやつ(笑)今のAKB系とかよりも、おニャン子ユニットの感じだなぁって思った。

06. LIVE HOUSE

今回は私的にハイライトで(笑)愛に溢れてるでしょ。昔からオーケンのMCネタにされてて、おいちゃんが10代の頃のバンドでやってた、ポップでキャッチーで甘酸っぱい青春の歌っていう、おいちゃん曲が筋少に入る前から言われてた。それが時を経て、復活後の筋少動画のリリース時に昔のライブ映像が話題になってオーケンがウッチーと歌ったのを始めに、ケラさんが有頂天初期メンバーのライブでやりたいって歌った。音源化されてないから、ずっと何かの形で音源化しておいちゃんボーカルで聴きたいなって思ってたのが、まさか筋少の新曲として生まれ変わるなんて、それがすごい嬉しくて。特典CDでだけおいちゃんが歌うのかと思ったら、本編でもおいちゃんとオーケンがデュオでハモってて素敵で。橘高さんの温かいソロが入ってて。これからずっと残って歌い続けてくれると思うとすごく嬉しい。
80年代のバンドブームがまだ初期の頃の空気で狭いライブハウス。想いを寄せるのはちょっと年上の女の子なのかも。後半にかかる歓声っぽい効果は広いステージに出て向かっていく感じに思える。あの頃に行ってみたい。

07. 別の星の物語り

内田さんの曲かと思ったら橘高さんの曲とは!メランコリックな感じ、クラシックギターをつま弾く。ストーリーが高校生の子供がいる女性が元彼にあったっていうのがはっきりわかるので(笑)、どっちもアラフィフだし、70年代歌謡曲っぽさ。マダムがメロメロになりそう。ウッチーが歌うバージョンがまた甘くて良い!これでSMAPが歌ってもいいかもとちょっと想像しました。

08. 私だけの十字架

前作に続きカバーのオーケン気持ちよく歌うシリーズ。これもドラマ特捜最前線の主題歌で、大都会のテーマと合わせて統一した哀愁漂う雰囲気を出している。

09. 大都会のテーマ

ロングバージョンめっちゃかっこいい。これをブリッジにしてさらにディープに潜っていく。

10. 時は来た

これはウッチー曲で重たくアッパーな感じの。聴き覚えあるリフで(笑)掛け声が入るライブが楽しいこと間違いない。ライブの熱気と一体感と、オチちょっとずらしたずっこけ感とか。うっそだよーん!ってウヒャウヒャ笑うところがすごい好き。

11. おわかりいただけただろうか

オカルト番組に定番のワード。恐怖映画の怖い曲調で。そこから語り部が女性に向けて愛を語るという展開になるのが意外性があって、その言葉に心を掴まれた。これこそオーケンの今の想いなんだ。優しくて、迷いがない。悔やんだ過去はやり直せない。未来に不安なことばかりある。でも今この瞬間だけなんだ、今が続いていくんだ。これが長年、作品を出し続けてきた重みと深みなんだって思う。

12. S5040

内田さん曲で、NESS曲にも通じるような感じのアシッドっていうのかな。サイケデリック調の曲。タイムトラベル物の歌詞は特撮でもよく書かれている。前回のゾロ目から続く、運命の二人が過去と未来を行き交うような。昭和の雰囲気もありつつ、もっと幅広い時空へと広がって、過去から世界中で紛争は続き、未来へ世界の終わりはどこなのか、そう思いを巡らせてみる。

13. 夕焼け原風景

アルバム最初のほうの、勢いある曲が筋少の表面だとしたら、裏面はバラードでじんわりと暖かく閉じる。川で夕日を見る二人の風景は前にも「きらめき」で表していた、暖かく好きな人を見つめるシーン。感情こもった泣きのギターに、想いを込めたボーカルにぐっとくる。ライブでもじっくり聴かせてくれそう。

古くもあり、新しくもある。昭和の当時を体験していなくても、楽しめて熱くなったり泣けたりほっこりする。時間飛行をする列車に乗って、過去と未来を行き来できるよう。出会った頃の気持ちに戻る感覚もあるし、今を生きるパワーを出せたりもする。筋少はバンドであるが、それ全体が物語のようで、結成した時から、楽曲からライブから、メンバーの生き様全てが。その中に入って私は物語を見続けているんだと思う。だから憧れてやまない。
いつ自分が死んで消えてしまうか分からない思いもあるし、バンド活動が続けられなくなってしまう時がいつ来るか分からない。物語を見届けていきたい。活動が続けられなくなったとしても、楽曲は永遠に残るし、物語はきっと終わらない。